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紙のラジオ

だから、読者よ、わたし自身がわたしの書物の内容なのだ。きみが、こんなにも取るに足らない、こんなにもむなしい主題のために時間を使うのは分別のない話ではないか。では、さようなら。

雑記:嫌いなものでも懐かしい

雑記

 今夜はブギー・バックにのせて展開する東京のファッション文化史40年をおさらいする映像を去年見たときに思ったことをTwitterに投げといたんだけど、それをまとめておこうと思う。思ったのは、やっぱ流行やスタイルってそれを作ろうとしてるひとによってできるものなんだなとか、残る文化は少ないなとか。

 私は「今夜はブギー・バック」って曲が当時から大嫌いだったんだけど、こーいうふうに当時を振り返るときにとりあえずの参照としてやはり使われる(当時流行ってたから)。でも当時流行ってたっつっても知ってる人しか知らないようなものなんだけど、だけれどもそれを起点にされてしまう。この曲がある時期のある文化のある文脈を担っていると解釈している人が比較的大勢いるからだ。40年後の少年に「大昔にAKB48って大勢のアイドルの人たちがいたんでしょ?」とか聞かれたときに、とにかく自分が当時AKBが大嫌いで、できるだけ彼らの情報を入れないように生活していたとしても、40年後の少年よりは明らかに近しく知っているが故に「いたね。歌を唄ったりジャンケンしたり握手会したり、いろんな活動をしてたんだ」とか説明することになる感じというか。興味ないなりに当時のものと関わらざるを得ない感じというか。

 そして、たとえば今回のTOKYO CULTURE STORYみたいな映像にとりあげられなかった人たちや文化というものはやはり消えていく/消えている。そのマイナーだったものやひとを大事にしていた人や好きだった人がいても、参照する元の情報や今でもそれを覚えている人の数が少ないからこそ(共有ができないから)消えていく。自分の中にしかないようなものは、もうすでにどこにもないのと同じようなものだとも言える。過去を共有したり振り返るための道具は、当時流行っていたもの、みんなが覚えているものなどに限られていく。

 自分はその当時生きていたから、TOKYO CULTURE STORYみたいな映像を見ると、そこには当時ムカついたものが沢山映っていたとしても「懐かしいな」と思う。それはただの昔の出来事として、興味ないなりにかつて鳴っていた音のようなものとして、それを思い出すことができる。と同時に、その当時自分がムカついてたものをいま率先して掘り返してくる人はいるんだな、とも思う。これが作られた文脈なのだ。当時の東京にいた誰か(大勢)の作った「90年代ってこうだったよね」みたいな文脈が(だいたい東京という世界最大の内輪向けのものだから)それに死ぬ程ムカついていた自分にも、それ以外の歴史的文脈が残っていないが故に「90年代ってこれだったな…」と適応されてしまうというか、理解ができてしまう。

 当時これが流行ってたし、みんなこれ知ってるでしょ?懐かしいでしょ?みたいな感覚ってなんか世界が狭い感じがするんだけど、多くの人が共有出来るものしか残らないのだ。そして実際に私はAKB48というアイドルグループがいま存在していることを知っている。40年後の少年より遥かに知っている。そもそも何かを懐かしむって行為を他人と共有しようとすると、他人と同じ(と誤解している)情報を共有している必要がある。AKB48を通して2010年を振り返るほうがフィンランドのノイズグループを通して振り返るよりも簡単、というか後者はほぼ不可能なんだよね。自分の中にしかない文脈は誰とも共有出来ないから文化や記憶として残らない。

 あとに文化として残るものはみんなが知っているもの/部分で、まあそれはみんなが知っているからこそ残る、誰も知らないものはそもそも残りようがないってことを思ったのだ。そして流行りのものが嫌いでも、それを知っていて共有出来てしまうが故に、それを残していることにじつは自分も加担しているのだ。あな恐ろしや。
 …てことは自分しか知らないことでもそれを流行らせることができれば後に残すことができる。で、まあそーいうことをしようとして実際にしてるのはだいたい東京での出来事ってことだった。今後は(インターネットがあるから)わからないけど。(でも無理そう)

 だからこそ、せめて個人的な何かを表現しようとするならば、多くの人もが受けたであろう影響や体験でなく、個人的な影響や体験をこそ作品に反映するべきなんだろう。独自のもの。

* * *

 とか言っていると、ふとTha Blue Herbを思い出した。ブルーハーブは初期のころ…といっても初めて聞いたのは2000年ちょい前くらいだけど、その文脈が凄く新鮮で最高だった。やっぱこーいう人いるんだとか素直に思った。懐かしいのでブルーハーブの曲を紹介して終わります。

www.youtube.com
音はよくないしよく考えたらこれは刃頭とイルボスティーノ名義だけどまあいいや。