紙のラジオ

だから、読者よ、わたし自身がわたしの書物の内容なのだ。きみが、こんなにも取るに足らない、こんなにもむなしい主題のために時間を使うのは分別のない話ではないか。では、さようなら。

Aphex Twinニュース

きょうのBGM : Aphex Twin Live at Field Day London

www.youtube.com
 2017年6月3日現地時間20時55分(日本では4日朝4時55分)ロンドンで行われたフィールドデイフェスティバルでのAphex Twinのライブ動画。音は(ここ数年では)いつものとおり、で何が違うかというとライブの最初から最後までWIREDCOREとNTSの協力によって生中継されて、Youtubeの動画としてアーカイブもされたということですね。公式の、初の、ライブの生放送だったというわけです。ライブと銘打っておきながら他人の曲を大量に流しているので初見のひとには「これDJじゃん」と言われても当然なのですが、90年代は自分の曲だけのライブをやってたみたいだけど(Youtubeで見れます)、えーとまあこれがわりと最近のAphex Twinのいつものライブなんです。

 このライブで使われたトラックリストはファンの集まるサイトで放送中から文殊の知恵のごとく情報が集められてまとめられています。
Aphex Twin, June 3rd 2017 Field Day DISCUSSION THREAD 2 : aphextwin

ここ最近のAphex Twinニュース

 で、きょうはここ最近のAphex Twinの活動やそれにまつわるネット上の情報などをまとめてみたいと思います。

スケジュール

 まずこの画像を見てください。
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 これはAphex TwinがWIREDCOREという映像作家集団(だと思います)と組んでライブをするツアーの日程のフライヤーの画像です。WIREDCOREのサイトで見れます。 http://weirdcore.tv/2017/03/09/aphex-twin-tour-dates-digital-flyer/

Houston, TX 12.17.16

 上記フライヤーには書かれていないですが、じつは昨年2016年12月17日にアメリカのテキサス州ヒューストンにて行われたDay For Night FestivalというフェスにもAphex Twinは出演し、この記事の冒頭の映像のようなライブを行いました。そして、そのフェスでこっそりと(すぐに話題になりましたが)どこにも前もって何の連絡もなく、とあるレコードを販売しました。

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 このレコードはそのまま『Houston, TX 12.17.16』と呼ばれていて、噂に依ると500枚だけプレスされた超限定もの、ebayではとんでもない値段を付けて転売しようとしているカルマの深い人々があらわれて話題にもなりました(ファンの間で)。そのレコードの内容はというと、モジュラーシンセを使ったノイズの入ったハードテクノという感じの曲がA面B面の2バージョン収録されたEPでした。そしてその日のライブでもAphex Twinはこの曲をかけていたのです。

Barcelona Primavera Sound / 01.06.17

 ということは、フェスでのAphex Twinの物販には未発表の新作レコードが発売されるんじゃないか?という期待が膨らむのもファン心理としては当然のことです。が、スペインバルセロナで行われたプリマヴェラサウンドでは販売されなかったようです。
 しかしAphex Twinのライブというものはファンにとっては新曲を楽しみにするものでもあり、この日のライブでも「Aphex Twinの未発表曲じゃないか」と思われる曲がかかりました。
www.youtube.com
Aphex Twin - New Song (Live at Primavera Sound 2017-06-01 [Barcelona])

 そしてこの曲はMike ParadinasがJlinというプロデューサーの曲だけを使って一時間のミックスを作るというBLEEPPodcast企画でかけている曲じゃないか?という指摘がファンから入ります。
soundcloud.com
 36曲目、54:11あたりからの曲です。
 "Jlin & Unknown - Unknown" と書かれているこのUnknownがAphexなのでは?との推測が。まだ真偽はわかりません。

London 03.06.17

 その二日後、の2017年6月3日に行われたフェスでのライブがこの記事の冒頭で紹介した動画です。ライブの様子が中継されるというのは当初明らかにされておらずサイトだけが公開され様々な噂が飛び交っていました。サイトで流れる曲がまたしてもだれも聴いたことのない曲だったので恐らくAphex Twinの未発表曲であろうとはみんな思っていました。ヒューストンでのことを考えるともしやレコードが…とだれもが期待することですが、その通り!当日これも500枚だと言われていますが、ミントグリーンのジャケットに包まれたホワイト盤レコードが唐突に販売されていました。

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 そして購入者がレコード盤のクラック(曲と曲の間の溝)を数えてみると、11曲も収録されているじゃないですか。え?アルバム?

謎のカウントダウン

 レコード盤に何が収録されているのかはディスプレイのこちらにいるファンには当時わかりませんでした。もちろんフェスにレコードプレイヤーを持って行っている奇特な人もおらず、そのレコードは謎のままライブが始まり、放送されました。そしてその放送が始まると同時に、以下のアドレスがアナウンスされたのです。
aphextwin.warp.net

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 アドレスの先はカウントダウンサイトになっていて、素直に一秒でひとつカウントされます。この数字は2017年6月5日22時頃に撮ったものですので、だいたい2017年7月6日17時頃にゼロになる計算です(ちょっとずれてるかも)。この七月六日に何が起こるのか、いまもファンの間で語られていますがもちろん確たる情報はありませんが、やはり皆ニューアルバムじゃないかと考えているようです。ツアーはすでに行っていますからね。あとはどのようなニューアルバムなのかということですが

1)Melodies From Marsという過去にお蔵入りになったアルバムの正規リリース
2)Selected Ambient Works Vol.3
3)soundcloudにAphexがアップロードした大量の未発表曲をまとめたもの
4)それぞれのフェスで限定販売されたレコード音源の正規リリース
5)完全な新作。もしくはまだ発売されていないがライブでプレイされた曲などが収録されているかもしれない

 といった説が主流のようです。もしくは12345の組み合わせですね。発売されるアルバムは一枚とは限らない…などそれぞれの説にはそれぞれの根拠や考えといったものがあったりなかったりですが、現段階ではとにかくわかりません。待ちましょう。

London 03.06.17 part2

 ライブが終わり、家に帰ったファンが早速レコードをリップしてファンサイトの希望者がダウンロードできるようにいづこかヘアップロードしました。ところでこの行為(アップロード/ダウンロード)はわたしは法律には詳しくないのですが国によっては違法でしょう。ではAphexのファンがこのように限定販売の音源を共有する行為についての倫理観、そしてそのことをレーベルやアーティストがどう思っているのかについて、Aphex Twinのケースはちょっと特殊でもあるので今度の機会に書きたいと思います。ちなみにAphex Twin本人は「自分の音楽を聴こうと思ったときに完全なディスコグラフィを共有ソフトでダウンロードできて便利だね」とインタビューで答えています。

 このレコードはやはり11曲収録されていてトータルタイムは32分とすこし。シンセやエフェクト機材をいろいろと試してみてるという荒い感じの曲がずらずらと並んでいます。作品全体の雰囲気はAFX名義の『Orphaned Deejay Selek 2006-2008』みたいで、曲も同じく実験要素が強いものばかりです。長さも同じくらいです。『Drukqs』以来14年ぶりに2014年に発売されたアルバム『SYRO』ほどは作りこまれていない。ワンアイデアを曲にするといった感じ。なのでおそらく聴いた感じではEPじゃないかなと私は思います。個別の曲についてもいろいろ思うところはあるのですがそれもまた今度にします。あ、Field Dayのライブでこのレコードから三曲プレイされていました。Houston方式ですね。

Forbidden Fruit 2017 Dublin

 ロンドン、フィールドデイフェスの翌日(!)に行われたアイルランドダブリンでのフォービドゥンフルーツ(隠語でもある)フェスにもAphex Twinが出演しました。この様子についてはなぜかファンサイトでもほとんど触れられていません。Youtubeにもまだ動画があがっていないので詳しい様子はまだわからずじまいです。ジェイムズ・ジョイスの描いたようにダブリンはなにか不思議な場所なのかもしれません。

 WATMMというファンサイトのCaribouさん曰く
AFX to headline Forbidden Fruit fest, Dublin - Page 2 - Aphex Twin - We Are The Music Makers Forums - Page 2
「未発表曲を沢山プレイした」「そのうちの一曲はSquarepusherみたいなのだった」「レコードの販売はなし」「ライブのあとでPVを作ったRyan Wyerくんやその家族と一緒にいた」とのことです。

 Ryan Wyerくんというのはアルバム『SYRO』に収録されているシングル曲
minipops 67 [120.2][source field mix]
www.youtube.com

 に合わせて踊った動画をYoutubeにアップロードしていた少年でした。そしてこのビデオがファンサイトで話題になり、そのことがAphex Twin本人の耳にも入り「このビデオが公式PVでいいじゃん」ということになり、そしてその後発売された『Cheetah EP』の一曲 CIRKLON3 [ Колхозная mix ] という曲のプロモーションビデオ作成をこのRyanくんにAphex本人から依頼し、PVが作成されたという経緯があります。
www.youtube.com
 その後もAphexとRyanくんの交流が続いているようです。Ryanくんがダブリンに住んでいるからAphex Twinはこのフェスに出演したのかも?しれません。

今後の楽しみ

 で、今後のAphex Twinの予定ですが
6月10日 スペインのポルトにてプリマヴェラ・サウンド出演
7月06日 謎のカウントダウン終了日
7月29日 日本の新潟にてフジロックフェス出演
8月11日 フィンランドヘルシンキでのフロウフェスティバル出演

 となっています。またどこかのフェスでは限定のレコードが販売されるのでしょうか?そして謎のカウントダウンは一体何を我々に報せてくれるのか?と様々な楽しみが私たちファンを待ち受けています。今年は当たり年ですね。

おまけリリースされていない未発表曲

www.youtube.com
Aphex Twin - [untitled] (Unreleased Track) (Live @ Day For Night 12/17/2016)

 HoustonでプレイされたけどHoustonのレコードには入っていなかった曲。このような曲が次のアルバムに入っているんじゃないかと考えられています。

 以上です。