紙のラジオ

だから、読者よ、わたし自身がわたしの書物の内容なのだ。きみが、こんなにも取るに足らない、こんなにもむなしい主題のために時間を使うのは分別のない話ではないか。では、さようなら。

作業日誌:170710 - G20でデモをしてた人たちはどんな人たちなのか

ドイツ、ハンブルクでのG20でデモ隊と機動隊との衝突があった

 と書くとかなり理解できる領域が減るという話でもある。もちろんデモ行進している人たちには(数万人と言われている)様々なグループと様々な主義主張や問題意識があって決して一枚岩でない。機動隊と衝突した過激なグループも参加者のうちのごく一部だ。

 G20でのデモ隊と機動隊の衝突による暴力的でセンセーショナルなニュースはかなり目についたけど、デモ隊はG20の何に反対しているのか、彼らの主張はなんなのかというニュースは見かけなかった。探しても(日本語メディアでは)ほとんどなかった。こーいう報道の仕方をするとデモをする人たちは暴力的な人たちだというイメージを植え付けることになると私は思う。よくない。なので英語メディアですがあるていど包括的な記事を貼っときます。これすらごく一部の視点だということをお忘れなく。

G20 in Hamburg: Who are the protesters? - BBC News

ちょっとながいけど以下引用と雑に翻訳

While the new US president's attitude towards climate change may have angered some gathered in Hamburg, Donald Trump is certainly not the only leader to have invoked protesters' ire.

米国の新しい大統領の気候変動(地球温暖化問題)への態度はハンブルクに集まったデモ参加者の怒りを引き起こすかもしれないが、ドナルド・トランプただ一人が抗議者(デモ参加者)の怒りを呼び起こしたというわけではない。

Russian President Vladimir Putin's intervention in Syria, Recep Tayyip Erdogan's crackdown on dissidents in Turkey and the corruption allegations surrounding Brazil's Michel Temer were just some of the issues brought up by one protester.

ロシアのプーチン大統領のシリアへの介入、トルコのレセプティ・タイイップ・エルドガンによる反体制派勢力に対する弾圧、ブラジルのミシェル・テマーを取り巻く汚職訴訟は、デモ参加者のうちの一人が提げた問題の一部だ。

However, the big problem appears to be the very idea that 19 world leaders, plus the two top officials of the European Union, doing deals behind closed doors.

大きな問題は、各国の指導者19人と欧州連合(EU)の最高責任者2人によって閉鎖的に取り決めが行われるということだろう。

"We know that the people who cause the misery that we have all over the world today - refugees, wars, and so on - they are sitting right now in the G20 and are having a chat." Suse Haber, a protester with an environmental group from Germany, told Reuters.

"In New York right now, some 130 countries are preparing a nuclear arms treaty, in order to abolish nuclear weapons. Meanwhile, the leader of the nuclear powers are sitting here having a good time. That's what we're protesting."

「こんにちの世界中の不幸(難民や戦争など)を引き起こしている当事者たちが、G20に集って気楽に話しているようですが」ドイツの環境団体の抗議者Suse Haberはロイター通信に対し、こう話す。

「ニューヨークでは今まさに、約130カ国が核兵器廃絶のために核兵器条約の準備を進めているけれど、核兵器を所有している国の指導者たちはG20で楽しくおしゃべりをしているだけ。それが私たちが抗議していることです」

 ちょっとカタい翻訳になってしまった。細かいところは違っているかもしれない。しかしデモ参加者(抗議者)の基本姿勢には、ほんとうに解決すべき問題は沢山あるし、その問題の当事者も集結しているというのに、G20は問題を解決するためのモノだとは思えないという基本姿勢があるのだと思います。G20サミットなんてお飾りじゃねえかと。

 その部分について言及している日本語の記事も見つけたので貼っときます。

「ようこそ地獄へ」G20サミット・あり得ないレベルの厳戒態勢(川口 マーン 惠美) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)

いずれにしても、これだけ莫大な経費をかけながら、G20で決定される重要事項など何一つなく、最後の共同声明もただのお飾り。法的拘束力は一切ない。

ちなみに、今回のG20の重要テーマの一つはアフリカ支援だが、G7もまとまらない昨今、G20に何か効果的なことが期待できるとも思えない。つまり、G20が世界をより良くするために役立っていないという点では、気勢をあげるデモ隊の主張は正しいようだ。

 デモ隊の違った側面に焦点を当てたCNNの記事もありました。

Rallies, riots and raves: Hamburg's three days of G20 protests - CNN.com

 以下引用です

As dusk fell Friday, activists returned to the Reeperbahn, where protesters from the LGBTI+ community, anarchists and other members of the left enjoyed three separate music events.

Some moved barefoot through the square -- cutting through a wafting pungent smell of cannabis and cigarette smoke as Lou Reed's "Perfect Day" blared from a loudspeaker.

Further down the street, anarchists and members of splinter left groups bounced heads to a socialist-styled hip-hop performance.

Later, a van that had been driven from southern Germany spun electronic music from its roof; a sizeable chunk of the crowd swaying their bodies as blinking lights from water cannon trucks flashed directly in front of them.

 雑な要約をすると金曜の夕暮れには三カ所で別々の音楽イベント(レイブ)が開催されていたようです。電飾バリバリのバンの天井からエレクトロニック・ミュージックが流れ、別の場所ではヒップホップ・パフォーマンスが行われ、裸足で通りを歩く人たちがいて、ルー・リードの『パーフェクト・デイ』のようにマリファナやタバコの煙が俟っていた。

 さらに引用をつづけます

As the G20 summit drew to a close on Saturday, an eclectic mix of up to 50,000 activists, according to police, moved through the city's sun-filled streets, shaking off Friday night's hangover with each step.

G20首脳会議が土曜日に閉幕したため、警察発表によると最大5万人の多様な活動家達が、金曜日の夜の二日酔いを振り払い、太陽に満ちた大通りを行進した。

The marches saw LGBTI+ groups, Marxist collectives, migration lawyers, Chinese human rights activists, Kurdish independence movements, feminist organizations and environmental activists walking peacefully alongside one another with riot police leading the way.


LGBTI+グループ、マルクス主義集団、移民弁護士、中国の人権活動家、クルド人独立運動家、フェミニスト団体、環境活動家たちの行進は、機動隊の導く道をともに平和的に進んでいった。

 ということらしいです。もちろんハンブルクのどこかでデモ隊と機動隊の衝突があったことは事実だけど、そのニュースはどこででも見れるのでこの記事ではとりあげません。

 しかしこのCNNのような記事をみると海外のデモは楽しそうだな〜とか思います。なんだかいろんな人がいろんな理由で参加していて、基本的に自由でピースフルで(町の人々からデモ参加者にコーヒーが振る舞われた、という描写もあった)みんなでパーティーやってまるで町中で行われる文化祭みたいで…暴力や衝突もあるけどそれがすべてではないんですね。

 そして根底には、世界で起こっている問題はわれわれ市民の問題なのだというごく当たり前の意識が見えていいですね。真っ当な感じがする。もちろん悪のりしてるお調子者もかなりいるだろうけれど。

今日のBGM : Lou Reed - Perfect Day

www.youtube.com
 本文にも出たのでルー・リードのこれを。数年前に亡くならはったですね。