紙のラジオ

だから、読者よ、わたし自身がわたしの書物の内容なのだ。きみが、こんなにも取るに足らない、こんなにもむなしい主題のために時間を使うのは分別のない話ではないか。では、さようなら。

ネタバレバリバリスターウォーズ9雑感

 『スターウォーズ9スカイウォーカーのなんとか』を見に行った。タイトルの時点で嫌な予感はしていたけどまあつまらない内容だった。スターウォーズは物語というかお話としてはつまらないのはわかりきっていることで(なんでアメリカ人はチャンバラや銃の撃ち合いが好きなんだろうか?)べつにいい、それはそれで楽しく時間が過ぎて行くのだが、じつは前作にてちょっと感心したところがあったのでその期待を裏切られた気分になってしまったのだ。それで「な〜んだ、つまらない」と思った。

 7,8,9 の新三部作は奇矯な友達の誘いで全て劇場へ見に行っていたのだけれど、7はBB-8が可愛くて傑作、8は意味のわからない戦争ばかりやってるものすごくしょうもない映画だが作品テーマとしてレイちゃんの自分探しがあった。そして8のなかではレイは何者でもない、ただのフォースが強いひとということになっていた。それでいいんだよと彼女を育てるルーク・スカイウォーカー。そして8の最後、宇宙競馬場みたいなとこで掃除やってるふつーの子供もがほうきをフォースでひょっと自分の手元に手繰り寄せる描写が入って終わる。これによって私は長らく続いた血統主義(スカイウォーカー一族最強史観)から何者でもない者たちのなかから世界を変えていくものが生まれるという今後の時代を象徴していく作品として終わるのだなと思っていた。カオスと汚職と混乱を極めたアメリカにも世界にも再び移民の時代がやってくる。次世代のヒーローは難民キャンプにいる。いいじゃん。

 しかし蓋を開けてみれば9はまた血統主義に逆戻り、ようするに生まれのいいものが力も持っている、結局本人パワーは親で決まるのだガハハというまことにしょうもない展開で終わってしまった。何者でもないはずのレイちゃんは結局一番強い家柄の子だっただけじゃんということになってしまった。いきなり生きていたことになった皇帝(誰だよ…知ってるけど)にアダムドライバーもレイちゃんもパワーを吸い取られ、金縛り状態でボコボコにされるというしょうもないクライマックス…そこにあの競馬場でほうきをフォースで手繰り寄せていたような無名の子供達が宇宙中からわらわらとおしよせ皇帝をねじりあげてぶっ殺していたらどんなにか素晴らしい映画になったであろうか。ラスト砂漠に立ち尽くすレイちゃんが名字を聞かれた際に「スカ…いや、ただのレイです。文句あっか?」と答えた方がどれほどの子供達が救われるだろうか。

 おそらくライアン・レイノルズ監督の8は7よりも評判もわるく、なかったことにされたのではないだろうか。7で大好評だったJ・J・のエイちゃんに再度白羽の矢が立ち「おい、わかってるなお前、わかってるな?8にすんなよ?わかってんな?」という圧力のもと冒険もできずあのようなしょうもない脚本展開になってしまったのではないだろうか。映画としてはしょうもないのがわかりきっているスターウォーズだがそこに込められたメッセージのようなものまでしょうもないのはしょうもない、せめてちょっと不思議な価値観や新しい世界観だけでも見せて欲しかった。だってSFなんだから。

今週の一曲:Immigrant Song (2007 Remaster) - Led Zeppelin

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