紙のラジオ

だから、読者よ、わたし自身がわたしの書物の内容なのだ。きみが、こんなにも取るに足らない、こんなにもむなしい主題のために時間を使うのは分別のない話ではないか。では、さようなら。

作業日誌:170606 - 今日が人生最初の日、エンスト

今日のBGM : Bright Eyes "First Day Of My Life"

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 リアルでいいPV。これはビデオがあってよかったなあというビデオってあまりないんだなということがいいPVを見るとわかる。
 ちょっと雑に訳してみましょう。かなり意訳してます。

This is the first day of my life
I swear I was born right in the doorway
I went out in the rain suddenly everything changed
They're spreading blankets on the beach
 

Yours is the first face that I saw
I think I was blind before I met you
Now I don’t know where I am
I don’t know where I’ve been
But I know where I want to go
 

And so I thought I’d let you know
That these things take forever
I especially am slow
But I realize that I need you
And I wondered if I could come home
 

Remember the time you drove all night
Just to meet me in the morning
And I thought it was strange you said everything changed
You felt as if you'd just woke up
And you said “this is the first day of my life
I’m glad I didn’t die before I met you
But now I don’t care I could go anywhere with you
And I’d probably be happy”
 

So if you want to be with me
With these things there’s no telling
We just have to wait and see
But I’d rather be working for a paycheck
Than waiting to win the lottery
Besides maybe this time is different
I mean I really think you like me

* * *

今日が人生で最初の日
誓って、俺はたったいま、このドアから産まれたばかりなんだよ
雨のなかへ飛び出て、突然すべてが変わったんだ
ビーチにタオルケットが広げてあってさ

君の顔、俺が最初に見たもの
俺は君に会うまでなにも見てなかったんじゃないかな
いまいるここがどこなのかわからない
いままでどこにいたのかもわからない
でもどこに行きたいのかはもう知ってるよ

そんで、俺は君に伝えないといけないと思ったんだよ
これは永遠につづくってこと
俺はかなりアホだけどさ
でも俺には君が必要なんだってことがはっきりわかったんだ
家にちゃんと帰れるかどうかもわからないけど

朝、ただ俺に会うためだけに
君が一晩中運転してきたときのことを覚えてる?
君が「すべてが変わったの」って言ったこと、俺は不思議に思ったんだ
君は、ちょうどいま目覚めたばかりって感じで
「今日が人生で最初の日よ」って言ったんだ
俺、君に会う前に死んでなくてよかったよ
君と一緒ならどこだって行けるよ
そんで、たぶん俺は幸せだと思う

もし君が俺と一緒にいたいと思ってくれてるなら
いや…これについてはなんとも言えないんだ
じっくり待って、よく見てみないとわからない
でも俺は宝くじが当たるのを待つよりも
コツコツ働くほうがいいと思ってる人間だよ
で…たぶん今回は今までと違うと思うんだけど
えーっと、俺はマジで君が俺のこと気に入ると思うんだよね

* * *

 という感じでしょうか。ちょっとややこしいとこがあるのは、原曲がちょっとややこしい表現をしているみたいなんですね。暗喩。どうやら語り手の男の人はちょっと普通でないとこがある。詩のミスリーディングもあるみたい。なので直訳で訳すのは難しい。いい曲だなと思った人はそれぞれ自分で訳すのも楽しくていいと思います。時間もかかるしね。

参考
genius.com

作業日誌

 今日は通院。の帰りに車を運転していたんだけど、あートイレ行きたいなと思っていたら急に車がエンストした。で、なんとか路肩に寄せてストップして、説明書とかいろいろ見たけどわからない。エンジンもかからない。しょうがないので保険会社に連絡してロードサービスを呼んでもらった。40分後くらいにつくらしい。ほっと一息ついて手持ちのポカリを飲んだらトイレに行きたいのを思い出す。ちょっと外に出てみて、近所にコンビニがないかぐるりと見回すが、ない。まあもうちょっと我慢するか、ロードサービスに車を引き渡したらタクシーで帰るついでに(この料金も保険から出るらしい)コンビニでもよってもらおうとおもって我慢して待つ。40分たってロードサービス業者が到着する。やっとトイレに行けるなと思いつつ、応対する。相手はハキハキして親切なすごくいい青年。車をがちゃんと牽引車につないで、いつも車検を任せている車のディーラーの住所を教えて、さよならしようとしたら「近所なので、狭いですけど一緒に乗っていかれますか?」と親切に言ってくれる。「ぐおおもうトイレ行けると思って油断してたーー限界に近いが乗ってしまうとコンビニによってもらうわけにはいかないな…もうちょい我慢できるか?断るのも悪いしな…」と思って牽引車に一緒に乗り込んで出発。そして道すがら保険会社オペレータとロードサービス会社の関係などの話をうわのそらで聞いていると、「あの、これ、もしよろしかったらサービスで、うちの系列会社が作っているオリジナルの…水です」と言って水を渡される!こちらの膀胱は破裂寸前なので冷や汗垂らしながら水を眺めていると「あ、中は普通の水なんで大丈夫ですよ」とまで言われたら少しでも飲まざるを得ない。ので飲

Aphex Twinニュース

きょうのBGM : Aphex Twin Live at Field Day London

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 2017年6月3日現地時間20時55分(日本では4日朝4時55分)ロンドンで行われたフィールドデイフェスティバルでのAphex Twinのライブ動画。音は(ここ数年では)いつものとおり、で何が違うかというとライブの最初から最後までWIREDCOREとNTSの協力によって生中継されて、Youtubeの動画としてアーカイブもされたということですね。公式の、初の、ライブの生放送だったというわけです。ライブと銘打っておきながら他人の曲を大量に流しているので初見のひとには「これDJじゃん」と言われても当然なのですが、90年代は自分の曲だけのライブをやってたみたいだけど(Youtubeで見れます)、えーとまあこれがわりと最近のAphex Twinのいつものライブなんです。

 このライブで使われたトラックリストはファンの集まるサイトで放送中から文殊の知恵のごとく情報が集められてまとめられています。
Aphex Twin, June 3rd 2017 Field Day DISCUSSION THREAD 2 : aphextwin

ここ最近のAphex Twinニュース

 で、きょうはここ最近のAphex Twinの活動やそれにまつわるネット上の情報などをまとめてみたいと思います。

スケジュール

 まずこの画像を見てください。
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 これはAphex TwinがWIREDCOREという映像作家集団(だと思います)と組んでライブをするツアーの日程のフライヤーの画像です。WIREDCOREのサイトで見れます。 http://weirdcore.tv/2017/03/09/aphex-twin-tour-dates-digital-flyer/

Houston, TX 12.17.16

 上記フライヤーには書かれていないですが、じつは昨年2016年12月17日にアメリカのテキサス州ヒューストンにて行われたDay For Night FestivalというフェスにもAphex Twinは出演し、この記事の冒頭の映像のようなライブを行いました。そして、そのフェスでこっそりと(すぐに話題になりましたが)どこにも前もって何の連絡もなく、とあるレコードを販売しました。

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 このレコードはそのまま『Houston, TX 12.17.16』と呼ばれていて、噂に依ると500枚だけプレスされた超限定もの、ebayではとんでもない値段を付けて転売しようとしているカルマの深い人々があらわれて話題にもなりました(ファンの間で)。そのレコードの内容はというと、モジュラーシンセを使ったノイズの入ったハードテクノという感じの曲がA面B面の2バージョン収録されたEPでした。そしてその日のライブでもAphex Twinはこの曲をかけていたのです。

Barcelona Primavera Sound / 01.06.17

 ということは、フェスでのAphex Twinの物販には未発表の新作レコードが発売されるんじゃないか?という期待が膨らむのもファン心理としては当然のことです。が、スペインバルセロナで行われたプリマヴェラサウンドでは販売されなかったようです。
 しかしAphex Twinのライブというものはファンにとっては新曲を楽しみにするものでもあり、この日のライブでも「Aphex Twinの未発表曲じゃないか」と思われる曲がかかりました。
www.youtube.com
Aphex Twin - New Song (Live at Primavera Sound 2017-06-01 [Barcelona])

 そしてこの曲はMike ParadinasがJlinというプロデューサーの曲だけを使って一時間のミックスを作るというBLEEPPodcast企画でかけている曲じゃないか?という指摘がファンから入ります。
soundcloud.com
 36曲目、54:11あたりからの曲です。
 "Jlin & Unknown - Unknown" と書かれているこのUnknownがAphexなのでは?との推測が。まだ真偽はわかりません。

London 03.06.17

 その二日後、の2017年6月3日に行われたフェスでのライブがこの記事の冒頭で紹介した動画です。ライブの様子が中継されるというのは当初明らかにされておらずサイトだけが公開され様々な噂が飛び交っていました。サイトで流れる曲がまたしてもだれも聴いたことのない曲だったので恐らくAphex Twinの未発表曲であろうとはみんな思っていました。ヒューストンでのことを考えるともしやレコードが…とだれもが期待することですが、その通り!当日これも500枚だと言われていますが、ミントグリーンのジャケットに包まれたホワイト盤レコードが唐突に販売されていました。

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 そして購入者がレコード盤のクラック(曲と曲の間の溝)を数えてみると、11曲も収録されているじゃないですか。え?アルバム?

謎のカウントダウン

 レコード盤に何が収録されているのかはディスプレイのこちらにいるファンには当時わかりませんでした。もちろんフェスにレコードプレイヤーを持って行っている奇特な人もおらず、そのレコードは謎のままライブが始まり、放送されました。そしてその放送が始まると同時に、以下のアドレスがアナウンスされたのです。
aphextwin.warp.net

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 アドレスの先はカウントダウンサイトになっていて、素直に一秒でひとつカウントされます。この数字は2017年6月5日22時頃に撮ったものですので、だいたい2017年7月6日17時頃にゼロになる計算です(ちょっとずれてるかも)。この七月六日に何が起こるのか、いまもファンの間で語られていますがもちろん確たる情報はありませんが、やはり皆ニューアルバムじゃないかと考えているようです。ツアーはすでに行っていますからね。あとはどのようなニューアルバムなのかということですが

1)Melodies From Marsという過去にお蔵入りになったアルバムの正規リリース
2)Selected Ambient Works Vol.3
3)soundcloudにAphexがアップロードした大量の未発表曲をまとめたもの
4)それぞれのフェスで限定販売されたレコード音源の正規リリース
5)完全な新作。もしくはまだ発売されていないがライブでプレイされた曲などが収録されているかもしれない

 といった説が主流のようです。もしくは12345の組み合わせですね。発売されるアルバムは一枚とは限らない…などそれぞれの説にはそれぞれの根拠や考えといったものがあったりなかったりですが、現段階ではとにかくわかりません。待ちましょう。

London 03.06.17 part2

 ライブが終わり、家に帰ったファンが早速レコードをリップしてファンサイトの希望者がダウンロードできるようにいづこかヘアップロードしました。ところでこの行為(アップロード/ダウンロード)はわたしは法律には詳しくないのですが国によっては違法でしょう。ではAphexのファンがこのように限定販売の音源を共有する行為についての倫理観、そしてそのことをレーベルやアーティストがどう思っているのかについて、Aphex Twinのケースはちょっと特殊でもあるので今度の機会に書きたいと思います。ちなみにAphex Twin本人は「自分の音楽を聴こうと思ったときに完全なディスコグラフィを共有ソフトでダウンロードできて便利だね」とインタビューで答えています。

 このレコードはやはり11曲収録されていてトータルタイムは32分とすこし。シンセやエフェクト機材をいろいろと試してみてるという荒い感じの曲がずらずらと並んでいます。作品全体の雰囲気はAFX名義の『Orphaned Deejay Selek 2006-2008』みたいで、曲も同じく実験要素が強いものばかりです。長さも同じくらいです。『Drukqs』以来14年ぶりに2014年に発売されたアルバム『SYRO』ほどは作りこまれていない。ワンアイデアを曲にするといった感じ。なのでおそらく聴いた感じではEPじゃないかなと私は思います。個別の曲についてもいろいろ思うところはあるのですがそれもまた今度にします。あ、Field Dayのライブでこのレコードから三曲プレイされていました。Houston方式ですね。

Forbidden Fruit 2017 Dublin

 ロンドン、フィールドデイフェスの翌日(!)に行われたアイルランドダブリンでのフォービドゥンフルーツ(隠語でもある)フェスにもAphex Twinが出演しました。この様子についてはなぜかファンサイトでもほとんど触れられていません。Youtubeにもまだ動画があがっていないので詳しい様子はまだわからずじまいです。ジェイムズ・ジョイスの描いたようにダブリンはなにか不思議な場所なのかもしれません。

 WATMMというファンサイトのCaribouさん曰く
AFX to headline Forbidden Fruit fest, Dublin - Page 2 - Aphex Twin - We Are The Music Makers Forums - Page 2
「未発表曲を沢山プレイした」「そのうちの一曲はSquarepusherみたいなのだった」「レコードの販売はなし」「ライブのあとでPVを作ったRyan Wyerくんやその家族と一緒にいた」とのことです。

 Ryan Wyerくんというのはアルバム『SYRO』に収録されているシングル曲
minipops 67 [120.2][source field mix]
www.youtube.com

 に合わせて踊った動画をYoutubeにアップロードしていた少年でした。そしてこのビデオがファンサイトで話題になり、そのことがAphex Twin本人の耳にも入り「このビデオが公式PVでいいじゃん」ということになり、そしてその後発売された『Cheetah EP』の一曲 CIRKLON3 [ Колхозная mix ] という曲のプロモーションビデオ作成をこのRyanくんにAphex本人から依頼し、PVが作成されたという経緯があります。
www.youtube.com
 その後もAphexとRyanくんの交流が続いているようです。Ryanくんがダブリンに住んでいるからAphex Twinはこのフェスに出演したのかも?しれません。

今後の楽しみ

 で、今後のAphex Twinの予定ですが
6月10日 スペインのポルトにてプリマヴェラ・サウンド出演
7月06日 謎のカウントダウン終了日
7月29日 日本の新潟にてフジロックフェス出演
8月11日 フィンランドヘルシンキでのフロウフェスティバル出演

 となっています。またどこかのフェスでは限定のレコードが販売されるのでしょうか?そして謎のカウントダウンは一体何を我々に報せてくれるのか?と様々な楽しみが私たちファンを待ち受けています。今年は当たり年ですね。

おまけリリースされていない未発表曲

www.youtube.com
Aphex Twin - [untitled] (Unreleased Track) (Live @ Day For Night 12/17/2016)

 HoustonでプレイされたけどHoustonのレコードには入っていなかった曲。このような曲が次のアルバムに入っているんじゃないかと考えられています。

 以上です。

作業日誌:170602 - ショボい人間なりの考え方、時間について

今日のBGM : eye - cassette acid garage punk mix

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 Boredoms (V∞REDOMS)のEYƎのDJ mix。Youtubeには各国の音楽マニアがレアな音源を惜しげもなくアップロードしているので、多作で雑多なアーティストのレアな作品があったりする。EYƎの仕事も世界各国にファンがいるので充実している。

作業日誌

美術の物語

美術の物語

 昨夜、眠れなかったのでゴンブリッチの『美術の物語』を読み直していた。その影響か、きょうの作業の前にモランディ→Giorgio Morandi - 65 paintings - WikiArt.org , ド・スタール→Nicolas de Staël - 47 artworks - WikiArt.org , スーラージュ→Pierre Soulages - 39 artworks - WikiArt.org , の作品をぼんやり眺めていた。モランディは昨年か一昨年か東京駅の展覧会で見た。人生中あまりアトリエから外に出なかった感じがあってなかなか感動した憶えがある。

 海辺に座る女性の絵を新たに描きはじめたが、いまのところどうにもならない。なにも見えない。どこへ行くのかもわからない。しかし美術の物語やゴッホの手紙を読んでもわかることなのだが、自分の限界と戦わなかった芸術家はいない。どんなに低いレベルでも超えるべきはその時の自分なのだ。

ショボい人間なりの考え方

 世界でいちばん強い碁打ちがGoogle人工知能囲碁プログラムAlpha Goに三番勝負で完敗したというニュースがあった。それをうけて機械ができることを人間がやってももう意味はない。いづれ仕事は機械に取って代わられる(産業革命時代みたいだな)囲碁は終わった、などと考えるのはつまらない。機械であれ他人であれ彼らができること、したことと自分がしたいことは別だ。他人がもう十分セックスしたのだからお前はするなとか言われて納得できますか?私は納得できない。他人がやろうがやるまいが私がセックスしたかどうかが重要なのだ。

 じぶんがやりたいことというのは、他人や機械がじぶんよりももっとうまくやっていても、そーいうこととは全く関係がないことなのだ。そして機械や偉人がとっくに見つけている素数をどきどきしながらひとりで探すのがショボい人間に生まれた醍醐味だとわたしは思う。遊びというものは自分がするものなのだ。遊びをせんとや生まれけむ…私は遊女ではないが。

時間について

 私は自分の意識がこの宇宙に芽生えるのにざっと140億年もかかったということを前提して、その140億年というあいだに私の意識はどこにも存在せず(たぶん)、140億年という時間を感じることもなく、あっという間に…というか気づいたらこの世界にいて、自分という意識を自覚していた。わたしがわたしを自覚するまでのその140億年という途方もない時間を宇宙は淡々と過ごしてきたこと、そして私が死んだあとさらに宇宙は140億年どころでない1000億年、兆年、もしくはその億倍、おそらく永遠ともいえる間存在しつづけ(冷えた宇宙説によると)その永遠ともいえる時間を淡々と過ごしつづける。

 とすると、宇宙が経験するであろう(?)10^x年という時間の単位と、私が経験する時間の単位(たとえばの寿命として70年)、そしてネズミが感じる時間の単位(だいたい2年としよう)に通底している「時間」というものは一体なんなのだろうか。それはただ尺度が違うだけで宇宙も人間もネズミも同じものを感じているのだと言えるのだろうか?自分が産まれる前、もしくは死んだあとの何億年というスケールの膨大な時間を淡々と過ごしつづける宇宙や惑星や他の生き物たちの感じている(過ごしている)「時間」というものが、わたしや私の友人たちが「今年ももう終わりだね」と指し示す「一年」のような「時間」と同じように流れているものなのだろうか?わからない。がしかし時間はそのように存在しないのではないかというのが私の勘だ。

 ひとは何億年というスケールの時間を体験することはできない。では百年を生きた人は百年という長さ、時間を知っていると言えるのだろうか?私は「一年」や「一日」という時間を認識できているのだろうか?ほかの人間の言う「一年」と同じ分量を私も「一年」と感じているのだろうか?それもわからない。

 だれでも考えるのは、時間というのは「数えたからある」ような捉え方をしているだけで、そもそも存在しないのではないかということだろう。たとえばA子ちゃんに対する愛情は抽象概念であり目に見えて実在はしないけれどA子ちゃんにいままでで400万円おごったぶんを愛だと捉えることにすれば、とりあえずその400万円という仮の分量を愛と呼んで計上することができる。それと同じような理屈でただ時間というものをカウントしているだけなのではないだろうか。そしてそのカウントの仕方はただ時計や太陽の軌跡を信用しているものと、アインシュタイン相対性理論の端的な説明に用いたように(ストーブに手をのせた時間と好きな相手と過ごす時間の比較)その主観的な時間を体感する個人差をごちゃごちゃと混ぜ込んでごまかして捉えているだけなのではないだろうか、というものだろう。

 しかし…たとえば私がこれを書いているのは西暦2017年の6月2日なのだけれど、私からすれば2500年の6月2日が未来だと確信できないのだ。もしかしたら2500年の6月2日がもうとっくに過ぎている、もしくは今起こりつづけているのかもしれない。織田信長が1560年6月12日に桶狭間の戦いの指揮をとっていたのも、過去のこと、もうこの世のどこにもないことだと私には思えないのだ。今もなお織田信長は1560年6月12日の桶狭間の戦いの指揮をとっていて、昨日の私は今もなお昨日を過ごしているような、三歳の私は今もなおあの布団の中で泣いているような気がするのだ。