紙のラジオ

だから、読者よ、わたし自身がわたしの書物の内容なのだ。きみが、こんなにも取るに足らない、こんなにもむなしい主題のために時間を使うのは分別のない話ではないか。では、さようなら。

作業日誌:2021年についてのメモ

 2021年は夏に手術をした。大きめの病院へ入院したんだけど手術はうまくいかなくて「リスクの低いやり方でもう一度やっても成功する確率が低い、もうすこし悪化したらリスクがあるやり方で再度手術しよう。それまでは様子を見ましょう」という方針になった。
 手術が終わって外科の病棟に数日入院していたんだけど、術後のダメージというか体への負担がけっこうなもので処方された痛み止めに加えて持参した痛み止めをかじりながら数日間なんとか回復を待っていた。できる限り眠って時間を流そうとするのだがずっと寝ているし痛みもあるのでなかなか眠れない。世の中を呪いつつじっとしていると同室者の様子もカーテンで仕切られてはいるがなんとなく耳に入ってくる。同室者の一人は顎の手術をしたようで数日して痛みを引きずりつつ退院して行ったがもう一人はどうやら大きな背中の手術をしたらしい。昼夜問わず毎時間看護師さんが様子を見にきたり、熱を測って39℃で「少し熱が下がって楽になりました」とか言っていて、気の毒でなんとも言えない気持ちになった。私の状態は(たぶん)マシな方で同室者はもっと大変そうだということがわかった。当然私の方が先に退院することになったのだが自分より大変な人はたくさんいるのだということをひしひしと感じた。とにかく健康がいちばんの財産である。もう二度と手術は嫌だ。

 この地に引っ越してから就いたバイトは相変わらず続けているのだが職場の人数も減り、そして労働環境と雇用条件があまり良くならないので私は沈みゆく船と呼んでいる。そのうち辞めるかもしれない(積極的に長く続けようとは思わない)。辞めるついでに今住んでいる土地もとりたてておもしろいわけでもないので引っ越したいなとか思っている。パリかギリシャのどこかに行ってみたいけどどうかな。職の関係で今年も何人かの死に触れたが今年は逆にコロナが流行って頻度は減ったくらいだ。死というものはほんとうによくわからない。他人のそれに触れるからといって自分が上手に取り扱うことができるというわけでもなさそうだ。この辺りについてはまたちょっと書き足したい。

 休日の調子の良い日はスケートボード・パークへ行ってスケボーしている。去年の6月くらいから始めて一年半ほどになる。スケボーは高校生の頃もやっていたのだが、やっと高校生だった頃よりも上手くなっているという段階になったかなという感じだ。高校生の頃は受験期にスケボーしていて右腕を骨折して美大の試験を左手で受ける羽目になった思い出がある。今年も三度ほど骨折したけれどスケボーとはそういうものなのでしょうがない。二度折った肋骨はもう回復しているが左手の手首と甲は今でも痛む。何度か病院へ行って、骨折してもだいたいは(変な折れ方をしてなければ)病院でできることは固定くらい、あとは回復を待つしかないということを知って以降はほったらかしにしている。スケートボードというものはフィギュアスケートと同じく、そして他のあらゆる物事と同じように上手くなるためにはこける(失敗する)ということを繰り返すしかないのだ。

 家にいるときには何をしているのかというとほとんど何もしていない。スケボーのビデオをYouTubeでみるか、90年代後半〜00年代前半の未だ聴いたことのないエレクトロニカYouTubeで探して聴いているか、面白そうな本をamazonで買うか(ほとんど見つからないし買っても読んでない)というくらいだ。絵は全然描いていないし以前作っていたノイズやテクノ音楽も作っていない。もう本当に何もしていない。消費のみ、たまにスケボーするのみ。そういえば家ではiMacadblockを噛ませたfirefoxYouTubeを眺めていたのだが、現在使っているガラケーの3Gが来年三月に廃止されるということで事前にiPhoneを買った。iPhoneのような最新スマホ機器でYouTubeInstagramを眺めるととてつもない広告の嵐で辟易とした。といってPremiumにするほどYouTubeに時間を使うつもりもないのでスマホは自分にとってはやはり必要のない端末だなという思いを持った。

 そのほかには庭の草花をチラ見したり夏場はプールに入ったり、家の周りをスケボーしながら散歩したり、川辺で土草を瓶に詰めて部屋で成長を眺めたり、太陽の光の移り変わりをしみじみ感じたりというこれまでなら「なにもしてない」と解釈しそうなことをするようになったかもしれない。あと身近な場所に牧場のような場所があって、最近そこにいるヤギや馬にも会いに行くようになった。逆にコロナ以降人間には全然会っていない。酒も飲んでない。

 実家の老猫は今年の夏も無事に越してなんとか生き延びてくれた。彼がいまも生きていて、一緒に時間を流すことができるというのはかけがえのないことだ。ほんとうにうれしい。

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 これはあくまで自分のメモなのでほかにもいろいろ思い出したら今日中に書き足したい。とりあえずこんなふうに今年は過ぎていったという感じだ。

今週の一曲:BLEACHED "THINK OF YOU"

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 スケボーのビデオに使われていて知った曲。憂いがあっていいです。それではまた来年…